アルミ相場、転換点近付く?

歴史的な高水準が続くアルミニウムの相場に変調の兆しが出てきた。ここ数年の価格上昇による増産で、需給が緩和に向かうとの見方が台頭している。中間原料となるアルミナの供給余力も急速に増している。来年以降、アルミ相場が反落に向かう可能性は高そうだ。

アルミは建材や飲料缶のほか、自動車や家電製品の部品など幅広い用途を持つ。ここ数年、中国の台頭や世界景気の拡大を受けて需要が増大。供給が追いつかず、国際指標のロンドン金属取引所(LME)相場(3カ月先物)は今年5月に1トン3310ドルの過去最高値を更新した。相場上昇が始まった2003年秋の2倍強に達し、現時も2700ドル近辺で高止まりしている。

だが07年以降、アルミ需給は緩和に向かいそうだ。住友商事の予想では、07年の世界供給は06年比6%増の3534万7000トンとなる。需要も同5%増の3521万5000トンと堅調に伸びるが、差し引きでは13万2000トンの供給超過になる計算だ。06年は20万トンの供給不足と、需給の引き締まり感が強かった。丸紅でも07年は4万2000トンの供給超過とみている。

供給超過となるのは、価格上昇が増産を促すためだ。ここ数年、欧米では原油高に伴う電力価格の高騰で製錬所の閉鎖が相次いでいた。アルミの製錬には大量の電力を必要とするからだが、今年に入ってアルミ相場が一段と上昇したことで、製錬設備を再開する動きが出てきた。

中間原料であるアルミナの値下がりもアルミの増産につながる。豪州産アルミナのスポット価格は現在、1トン210―240ドル(本船渡し)。3―4月には600ドルを超すなど高騰していたが、8月ごろから急速に下落し、足元では3分の1近くまで水準を切り下げている。中国を始め、アルミナも急速に供給余力が増しており、長期的にも需給は緩和に向かうことが確実とみられている。

LMEの非鉄市場では、現在も亜鉛や鉛、ニッケルなどが過去最高値圏で推移。銅も足元は軟調だが、依然高値を維持している。亜鉛や銅は、鉱石の需給が引き締まっており、生産余力は低い。ニッケルも在庫が歴史的な低水準だ。非鉄の中でいち早く、アルミが下落への転換点を迎える公算が大きくなってきた。