ばら積み船用船料、中国勢が高騰演出

今夏から上昇が目立つ外航ばら積み不定期船の用船料(海運会社などが船主から船を借りる際の料金)。主に鉄鉱石を運ぶ大型船の場合、現在は5月の直近安値の3倍近くに達している。旺盛な中国の鉄鉱石輸入を受けた船腹需要の増加が主因だが、それだけではない。中国系船会社などの思惑も見え隠れしている。

大型船のケープ型(積載重量15万重量トン超、太平洋水域)の用船料は現在、1日当たり7万ドル前後。直近安値(2万5500ドル前後)を付けた5月下旬の2.8倍に当たる。7万ドル台に乗せたのは2005年4月以来。05年の高値8万1500ドル前後を上回る可能性も出てきた。

ケープ型の用船料は中国の鉄鋼メーカーと資源メジャーによる06年度の鉄鉱石輸入価格交渉が決着した6月末から上昇トレンドに入った。国際鉄鋼協会がまとめた1―8月の中国の粗鋼生産量は2億7250万トンと前年同期比18.6%増。市場の予想以上の伸びを示したことが最大の強材料になった。

用船市場では実需だけでなく「投機的な動きが目立った」(大手海運会社役員)と指摘する関係者も多い。中国系海運会社が7月以降、数カ月から数年の用船契約を結んだ後、相場が上がったスポット市場で船を転貸してサヤ取りする動きがみられたからだ。

中国の粗鋼生産量に関しては、もともと「鉄鉱石の価格上昇を抑えたい当局が低めの予測をしていた」(同)との見方がもっぱら。「夏場には粗鋼生産量の数字が当局から発表前に中国系船会社に流れ、船会社が先高を予測して手当てに動いたのでは」といぶかる海運関係者もいる。

ばら積み船は特定の鉄鋼会社などと長期契約を結ぶ場合も多く、スポット市場に回る船の数はそれほど多くない。投機的な動きで短期間に市況が左右されやすい性格を持つ。いずれにせよ今回の用船料高騰は中国勢によって「演出」された面が大きいようだ。