コメ、「魚沼と北海道産だけ人気」なぜ?

主食であるコメの銘柄の中で「勝ち組」と「負け組」がはっきりし始めている。勝ち組は高級銘柄米の代名詞といえる「新潟・魚沼産コシヒカリ」と、きらら397を筆頭とする「北海道産米」。この2つを除くほとんどの銘柄は、コメ価格センターの入札で前年を下回る価格を付けるか、落札がほとんどない状況だ。

06年産米の出回りが本格化してから最大の43銘柄が上場した10月11日のセンター入札では、15銘柄が成約せず、落札率も20%台にとどまった。全量落札したのは魚沼コシのほか、きらら397、ほしのゆめ、ななつぼしの北海道産3銘柄だけ。前年同時期の価格を上回ったのは5銘柄(今年から上場のななつぼしを除く)しかなかった。

卸がセンター入札より、各地の単位農協との直接取引や全国農業協同組合連合会との相対取引を重視しているため、入札が低調という側面はある。だが人気のある銘柄は何としても確保したいと考える卸がいるため、落札率や価格の差が大きく増幅されていると言える。

「魚沼コシは必ず買う消費者がいる強力ブランドで、北海道産米は価格の割においしいコメなので人気がある」と説明される。だがこれだけでは十分な理由とは言えないだろう。生産者に対して申し訳ない言い方だが、消費者が購入しようと意識するコメとは、誰もが知っている有名ブランドか値ごろ感のある北海道産米しかなく、ほかは「安ければ買ってもいい」コメになりつつあるのではないだろうか。

コメの1人当たり消費量はピークの昭和30年代に比べて半減し、現在は年間60キロを割り込む。コメは食べるが以前より重要度が低下し、パンやパスタ、うどんなど多くの主食の中の1つとなりつつある。今後は少子高齢化が進んで1人当たりの消費量自体が減るため、コメの消費量減少がさらに加速する恐れもある。

コメは味の違いだけで消費者が銘柄を判断するのは難しいとされる。価格と味のバランスで選択するといっても、自分の味覚に絶対の自信がある消費者は多くあるまい。結果として有名か値ごろ感があるか、で判断するしかない。「地産地消」などで各産地・銘柄米に対する消費者の愛着を今から育てるのは、かなり難しい状況になっている。