株式の振替決済制度

株式の振替決済制度とは、株式の売買のときに株券をやりとりせず、お互いに帳簿に記載して取引をすませる制度です。このやり方は、パリの取引所で主に行われていますが、わが国でも売買の多い銘柄については、証券会社相互間の取引に利用されています。そこで、これを外国株式に応用して、外国企業が東京市場上場予定株数の原株式をまず、その国の銀行に預託し、その証明にもとづいて東京証券取引所の付属機関に記帳し、これを振替決済で売買することになったのです。

そして、本当の投資家は証券会社に口座を作り、その証券会社の振替決済で取引します。こうなると、投資家と株式発行の外国企業とは直接の株主関係になりません。そこで、株式事務取り扱い機関を設け、ここが外国企業から営業報告や株主への諸通知を受け取って、投資家に連絡する役割をつとめることとなり、この取り扱い機関には証券代行業務で国内の株式事務取り扱いに慣れている信託銀行が当たることとなりました。まだ外国株の上場は百十六社(平成元年九月末現在)ですが、この増加につれて代行関係もますます国際色が豊かになることでしょう。

なお、振替決済制度は、現在外国株について完全に実施されていますが、国内株式、さらには公社債についても、大量の証券類の流通を円滑かつ安全に行うために実施すべきだという意見が高まり、商法関係の学者と、証券、銀行、信託などの実務家との間で研究が進められ、そのうち国債については金融機関や証券会社などその保有や売買の多い法人について、日本銀行を受寄機関として昭和五十五年二月から実施されることになりました。

その後、五十九年五月に株券その他の有価証券の保管および受け渡しの合理化を図ることを目的とした「株券等の保管及び振替に関する法律」が公布され、同年十二月には、中核機関となる(財)証券保管振替機構も設立されました。実務的・技術的な検討を経て平成三年十月には実際に動き出す予定となっており、証券代行業務も新しい時代を迎えることになると思われます。