ゆきとどいた在宅看護

どのホームも入居者の半数は、公的な費用の援助を受けている人たちである。あと半分の人は自分の年金で利用料金を払っているといっていた。日本のように、貧乏人は公費老人ホームの四人部屋、金持ちはぜいたくな(しかし案内書に書いてある通りの医者がいなかったり、倒産したり、入所条件が変ったりして、安心感に乏しい)ホーム、というように截然と区別されていない。

ホームの人手も十分にあり、看護婦とヘルパーと、看護大学に入学を希望している若い女性たちがいた。西ドイツでは兵役につきたくない青年は、兵役のかわりに有給で福祉施設に働くと、兵役が免除になる。老人ホームの食事をそのまま在宅老人に給食サービスしているところもある。

老人ホームのほかにも公立のケアつき老人住宅があり、ここではマンションに常時、看護婦とヘルパーが待機していて、老人たちの買物や掃除の手助けをしたり介護をしたりしている。ドイツの哲学者で教育者でもあるR・シュタイナー(一八六一〜一九二五年)は、一九一九年にシュトゥットガルトで子どもたちの自主性を尊重する自由学校を開き、その後、このようなシュタイナー方式の学校は世界の各地でつくられていった。シュタイナー方式の老人ホドムは、シュタイナーの哲学にもとづいて彼の哲学を実践する人びとによって営まれているもので、ここで働く人の多くは、シュタイナー方式の学校の卒業生である。

在宅老人は、自宅とデイケアーセンターとの間を、専用バスが送迎してくれる。デイケア・センターでは食事、スポーツ、リハビリ、。カ。ウンセリング、マッサージ、絵や音楽や工芸をするそれぞれの部屋、水泳のプール、図書室や学習するミーティング室もあった。ショートスティの部屋では家族が夏休みをとるときなど、数力月まで預かる。精神障害者や痴呆の老人も預かってくれ、もちろんみな個室である。痴呆老人や精神障害の人の個室は、ちょうど幼稚園のように、アヒルやリンゴのマークが部屋の扉にはっ。てあり、そのマークで自分の室や自分の持ち物を見分けるのだという。部屋も病室風になっている。

このデイケア・センターには、。ワイッゼッカー大統領の次のような言葉が記されていた。多くの老人たちは孤独を感じる。しかし、もし彼らが、気心の合う人や同じ問題を持つ人たちと出合い、語りあい、援助を受けることができる場所があるなら、孤独はさけることのできない運命ではない。この建物は、老市民たちが、いきいきとした、価値ある生活を送ることができるように、援助する場所を提供するために建てられた。ここでは、彼らの、社会的、文化的生活の核になるような計画をたてる。それは困難な再建の時代に今日のベルリンを作り、それによって私たちの今日の自由を実現してくれた老市民たちへの、私たち仲間の感謝のしるしである。