マネーセンター・バンクを目指す

合併後も多地域銀行のリーダーを目指し、マネーセンター・バンクになる意図はないと表明しているが、その方針を守り切れるか否かを疑問視する向きもある。バンカメリカは収益の三割を大企業取引や国際業務であげているし、両行のカルチャーは大きな相違があるからだ。海兵隊出身のマッコール会長の下で培われたヤンキー魂のネーションズ文化と、バンカメリカのカリフォルニア文化との融和は、一つの挑戦課題であろう。

すでに権力闘争は、ネーションズ側に有利に展開しているようだ。ネーションズ側は、旧バンカメが九八年夏のロシア債務危機に伴うヘッジファンド向け融資で三億七〇〇〇万ドルの損失をだしたとして、トップのコールター社長の責任を追及して辞任させ、ネーションズのマッコール会長が主導権をとった。

ネーションズ、バンカメリカの合併発表と同じ日に、ファーストーシカゴNBDとバンクーワンの合併が発表された。中西部で最大の総資産二三〇〇億ドル、株主資本一九〇億ドルの銀行となる。これまでにも比較的小規模の銀行が合併を重ねて、地方にスーパー地銀が誕生してきたが、バンクーワンもその一つである。これに対してファーストーシカゴNBDは、イリノイ州ミシガン州ではリテール銀行業務でも有力であるが、基本的にはホールセール銀行の性格をもつファーストーシカゴとデトロイトーナショナル銀行の合体した銀行である。

両行のこれまでの合併にくらべ、今回ははるかに大型であり、その目的は規模の利益の追求、費用の節約、州を越えての全国展開を目指そうとするものであろう。年間のコスト削減は九億ドル、収入増は三億ドルを計画。合併によりクレジットーカード市場でのシェアは全米二位となる。

さらに六月には、米国最古の銀行の一つ、サンフランシスコのウェルスーファーゴとミネアポリスのノーウェストとの合併が発表された。これで全米九番目、資産一九〇〇億ドルの銀行が誕生した。ウエルスーファーゴは九六年、ファーストーインダースデートに敵対的買収をしかけ、これを手中にしたものの、重複店舗の閉鎖や情報システム統合を急ぎすぎて、データミスが多発したり、大量の預金やスタッフの流出を招いた。